単価交渉の記事は、たいてい成功した話です。私も月収68万円から70万円になった記録を書きました。
ただ、私には通らなかった回もあります。この記事はそちらです。
材料を出して、待って、「厳しい」と言われました。それでも、まったくの無駄ではありませんでした。 断られたあとに聞いた話のほうが、正直、成功したときより勉強になっています。
なお、参画先や担当者が特定される情報は書けません。書けるのは、やり取りの流れと、言われた内容の型だけです。
先に結論
この回で分かったことは3つです。
- 単価交渉は、自分から切り出すとは限らない。 私の場合はエージェント側から持ちかけられました
- 断られても、評価が低いとは限らない。 「パフォーマンスに問題はない」とはっきり言われています
- ★ 断られたあとに「では何が必要ですか」と聞くと、具体的な条件が返ってくる
3つ目がいちばん大きかったと思っています。断られた時点で会話を終えていたら、何も残りませんでした。
以下は私の1回の経験です。「こうすれば断られない」という話ではありません。
交渉は、相手から始まった
ある月、契約の延長の話をしたあとに、エージェントの担当者から連絡が来ました。
内容は、単価交渉をしたいので材料をください、というものでした。私から言い出したわけではありません。
これは自分でも意外でした。うまく行った回の記事では、自分から資料を用意して切り出しています。待っていても始まらないと思っていたのですが、相手から来ることもある、というのが実際のところでした。
契約の更新のたびに、単価を見直す機会そのものは発生します。誰がそれを切り出すかは、そのときどきで変わるようです。
求められた材料は2つだった
指定されたのは、次の2つでした。
- できるようになったこと
- クライアントへの貢献していること
この2つだけです。書式の指定も、分量の指定もありませんでした。
いま振り返ると、この2分割はよくできていると思います。前者は自分の話で、後者は相手の話です。 自分がどう成長したかだけを書いても、発注する側には響きません。
材料づくりにかけたのは60分
カレンダーに記録が残っていました。文章を書いて送るまでで、ちょうど1時間です。
短く済んだ理由は単純で、日々の作業記録がそのまま材料になったからです。何をいつ作ったかを追える状態にしてあれば、思い出す時間が要りません。ここは成功した回とまったく同じでした。
提出したものの型は、こうです。中身そのものは書けないので、種類だけ挙げます。
① できるようになったこと
- CIの実行結果を開発者に見せるしくみを、試作から実用まで作った
- その表示内容をテンプレート化して、あとから直しやすくした
- 手作業だった開発機材の初期設定を自動化した
- 設定が正しく反映されたかの確認も、画像の比較で自動化した
- 手順書を日本語と英語の両方で用意し、チームに共有した
最後の1つは、時差のある拠点でも同じ手順で対応できるようにするためのものです。
② クライアントへの貢献
- セットアップにかかる時間を減らし、進行を速くした
- 定期的に改善策を出し、議論をまとめる側に回った
- 認証まわりのしくみを整えて、安全性を上げた
①は「私は何ができるようになったか」、②は「それで発注側に何が起きたか」という関係になっています。同じ作業でも、書き分けると意味が変わります。
提出したときの返事は「素晴らしいです」でした。この時点では、手応えはありました。
結論は「厳しい」だった
1週間ほどして、返事が来ました。
延長は問題ない。ただし単価アップは厳しい。
理由も伝えられました。同じ現場に、私より速く仕事を回す人がいたということです。その人と比べると、発注側に単価の相談を持ちかけにくい、という話でした。
これ以上は書けません。他の人の評価に踏み込む話になるからです。
正直に言えば、材料を1時間かけて出したあとだったので、落ち込みはしました。ただ、このあとの会話のほうが大事でした。
「パフォーマンスに問題はない」と言われた
同じ連絡の中に、こうありました。
きちんと仕事をしていて、納期も守られているので、パフォーマンスには問題がない。
そして、無理に仕事を早めたり量をこなしたりする必要はない、とも言われています。
ここは読み間違えやすいところだと思います。単価が上がらなかったことと、評価が低いことは、別の話でした。 求められている水準は満たしている。ただ、それは単価を上げる理由にはならない、ということです。
単価は「ちゃんとやっているか」で決まるのではなく、「もっと払う理由があるか」で決まる。私はそう受け取りました。
「では、何が必要ですか」と聞いた
担当者の説明には「単価を上げることを考えるとそれが必要」という一文がありました。その「それ」が何を指すのか分かりませんでした。
なので、そのまま聞き返しました。
返ってきたのは、次の2点です。
- いまの業務を、納期よりも早く終わらせること
- 終わったあとに「追加で手伝えることはありますか」と聞くこと
抽象的な話ではなく、行動として言われました。
聞かなければ出てこなかった情報です。断られた連絡を受け取って、そこで会話を終えていたら、「厳しいと言われた」だけが残っていました。
言われた2点を、どう受け取ったか
この2点は、どちらも成果物の質の話ではありませんでした。
- 1つ目は速さ
- 2つ目は手を挙げるかどうか
つまり、求められていたのは「もっと良く作ること」ではなく、「もっと引き受けること」だったわけです。
これは、そのまま実行するかどうかを考えるべき内容だと思っています。私の場合、当時の現場ではレビューの待ち時間が長く、自分の側を速くしても、その先で止まるという事情がありました。だから速さだけを追っても、単価には結びつきにくい状況でした。
そのことは担当者にも伝えています。エージェントは、伝えれば現場に確認してくれる立場でした。
うまく行った回と、何が違ったのか
同じ人間が、同じように材料を用意して、片方は通り、片方は通りませんでした。並べてみます。
| 通った回 | 通らなかった回 | |
|---|---|---|
| 切り出した側 | 自分から | エージェントから |
| 出したもの | 実績を「価値・再現性・期間」で整理した資料 | できるようになったこと/クライアントへの貢献 |
| 相手の反応 | 増額の判断が出た | パフォーマンスに問題はない、ただし厳しい |
| 分かれた理由 | —— | 比較する相手がいた |
準備の量で負けたわけではないと思っています。違ったのは、そのとき現場に誰がいたかでした。
だから私は、単価交渉の結果を自分の実力の評価として受け取らないようにしています。もちろん実力は関係します。ただ、それだけで決まってはいませんでした。
一方で、通った回で書いた「再現性を書く」という考え方は、今回も間違っていなかったと思います。今回求められた2点も、結局は「これからも同じ価値を出せるか」を見る話でした。
契約自体は続いた
単価は据え置きでしたが、契約の延長はそのまま決まりました。
当たり前のようですが、交渉する前は少し不安でした。単価の話を持ち出すと関係が悪くなるのではないか、という不安です。
私の場合、それは起きませんでした。担当者は材料を求め、結果を説明し、次に必要な条件まで伝えてくれています。断られはしましたが、扱いが雑になったということはありません。
まとめ
- 単価交渉は、エージェント側から持ちかけられることもある
- 求められた材料は「できるようになったこと」と「クライアントへの貢献」の2つだった
- 材料づくりは60分。 日々の作業記録があれば、そのくらいで足りる
- 🔴 結論は「厳しい」。理由は同じ現場に、私より速く仕事を回す人がいたこと
- ✅ ただし「パフォーマンスには問題がない」と明言された。通らない=評価が低い、ではなかった
- ★ 「では何が必要ですか」と聞いたら、2つの条件が返ってきた —— 納期より早く終わらせること、終わったあとに追加で手伝えることを聞くこと
断られた回のほうが、次に何をすればいいかは具体的に分かりました。聞いたからです。
単価交渉そのものの進め方は、通った回の記録に資料の構造まで書いています。エージェント自体をどう選ぶかは、レバテックフリーランスを使った記録とテックビズを1年9か月使った記録にまとめました。