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フリーランスの単価交渉で月68万→70万円になった実例|提出した資料の構造

月収68万円から70万円へ単価交渉した記録。提出した資料をどう組み立てたか、実績をどう書いたか、何を根拠にしたかを、参画先が特定されない範囲で公開します。

参画している案件で単価交渉をして、月収が68万円から70万円になりました。

交渉そのものは、あっけないほど短く終わりました。準備した資料を提出したあと、実際のやり取りはほんの数往復です。この記事では、その資料をどう組み立てたかを記録します。

なお、資料には参画先の事業内容や具体的な成果物が書かれています。そこは公開できません。書けるのは、資料の構造と考え方だけです。 それでも、交渉の準備をする人には十分に使える形になっていると思います。

先に結論

私がやったのは、次の3つです。

  1. 実績を「価値・再現性・期間」の3点セットで書いた
  2. 主張を、発注する側の判断基準に翻訳した
  3. 希望額に届かなかった場合の意向も、先に書いておいた

このうち、いちばん効いたと感じているのが再現性です。過去に何をしたかだけでは、「終わった話」になります。同じ価値をこれからも出せる、という根拠を書いて初めて、単価を上げる理由になると考えました。

以下は私の1回の経験です。「こうすれば必ず上がる」という話ではありません。

交渉のきっかけ

エージェント経由で働いていると、単価の見直しは自分から切り出さないかぎり起きません。少なくとも私の場合、待っていて上がったことはありませんでした。

だから、資料を用意して自分から相談することにしました。

提出した資料の構造

資料は大きく3つのパートに分かれています。

1. 交渉の前提
   - 現状の整理(参画期間・担当した領域・進め方)
   - 希望する単価
   - 希望額に至らなかった場合の意向

2. 実績(8項目)
   - 各項目を「価値・再現性・期間」の3点セットで記述

3. 交渉で伝えたい主張

前提:希望額に届かない場合まで、先に書く

最初のパートで、現状と希望単価を整理しました。そのうえで、希望額に届かなかった場合の意向まで書いています。

延長の意向:有/一万円でも上がれば可

自分で書いておいてなんですが、ここがいちばん交渉らしい部分だったと思います。

金額が通らなければ辞める、という書き方はしていません。一方で、上げてほしいという要求は明確にしています。相手にとっては、満額でなくても着地点が見えている状態です。

交渉を決裂させたいわけではありませんでした。続けたいけれど、評価は上げてほしい。その両方を、先に伝えておきたかったのです。

実績:8項目を「価値・再現性・期間」で書く

いちばん時間をかけたのがここです。担当した仕事を8項目に整理して、それぞれを次の3点で書きました。

要素 書いた内容
価値(影響) 作業内容ではなく、それによって何が変わったか
再現性 同じ型で、ほかの案件にも展開できるかどうか
期間 いつからいつまで取り組んだか

作業内容をそのまま書かない、というのが最初のポイントです。「〇〇を実装した」ではなく、それによってリードタイムが縮んだのか、品質が担保されたのか、判断の材料になったのか。影響のほうを書きました。

そして再現性です。ここが肝でした。

過去の成果だけを並べても、相手からすれば「もう終わった話」です。単価は、これから支払うものです。だから「同様の案件にも同じ型で展開できる」と書いて、次も同じ価値を出せる根拠にしました。単価は過去への報酬ではなく、これからへの投資である。そういう前提で書いた、ということです。

期間を添えたのは、成果の密度が見えるようにするためです。

主張:発注する側の言葉に翻訳する

最後のパートで、伝えたいことを整理しました。中身は案件によって変わるので、ここではどういう軸で書いたかだけを挙げます。

  • 任されている役割の広がり
  • 成果物を運用に耐える形まで仕上げていること
  • 進め方によって、プロジェクトの不確実性を下げていること
  • 継続して関わることで生まれるメリット

共通しているのは、すべて発注する側にとっての価値の言葉になっているという点です。「頑張った」でも「長く働いた」でもありません。リードタイム、品質、不確実性、リスク。相手が判断に使う軸に翻訳しました。

これは意識してやったことです。理由は次に書きます。

資料は、技術が分かる人だけが読むとは限らない

私はこの資料を、エージェントにメールで送りました。そこから先、誰がどう読んだのかは分かりません。 現場の人だけで完結したのか、どこかで別の判断が入ったのかも見えていません。

ただ、ひとつ確かなことがあります。単価を決めるのは、必ずしも技術が分かる人ではないということです。

技術を評価する人と、金額を決める人は、別であることが多いと思います。だとすれば、技術の話だけで固めた資料では足りません。読んだ人がそのまま誰かに説明できる形になっていたほうが、話は進みやすくなります。

発注する側の価値の言葉に翻訳したのは、そのためです。

なお、この資料は現場の技術責任者も目にしていました。あとになって、こう言われています。

単価交渉って、ああやってするんですね

感心された、という反応でした。自分で「うまくいった」と言うより、この一言のほうが確かだと思っています。

単価が上がるとき、誰かが損をするわけではない

単価交渉というと、限られたお金の取り合いのように感じるかもしれません。私はそうは思っていません。ここから先は私の解釈になりますが、書いておきます。

単価が上がるのは、続けてほしいと判断されたから

まず、単価が上がるのは「上げてでも続けてほしい」と判断されたときです。

依頼する側からすれば、金額を上げるのは面倒な手続きです。社内の承認も要ります。それでも上げるということは、上げないほうが困ると考えたからにほかなりません。いないと困る、あるいはいたほうが良い。その判断の結果として、金額が動きます。

そしてこの判断は、経歴書や商談の印象ではなく、実際に一緒に働いた数か月の結果として下されています。事前の評価より確かな材料です。

だとすれば、上がった分は提供した価値の対価です。受け取ることに後ろめたさを感じる必要はない、と私は考えています。

そもそも、事前に見極めるのは難しい

その前に、前提をひとつ書いておきます。

エンジニアの数そのものは多くいます。しかし、ある現場にうまく噛み合う人を、契約前に見極めるのは難しいというのが私の実感です。

判断材料は、経歴書と1〜2回の商談しかありません。そこで良い印象を持たれたとしても、実際に動き出してから分かることがあります。

  • 経歴に書かれている技術で、思ったほど手が動かない
  • 込み入った設計を任せると、そこで止まってしまう
  • 報告が上がってこない、認識が食い違うなど、進め方で摩擦が起きる

どれも、数週間から数か月一緒に働いて、はじめて表に出てくるものです。逆に、期待されていなかった人が伸びることもあります。

単価が高い人が優秀とも限りません。 金額は、経歴の見せ方や交渉の結果でも動くからです。

私自身、手応えのあった商談で落ちたこともあれば、「ダメだったかな」と思った商談で決まったこともありました。見極める側も、見極められる側も、確実ではありません。 どうしても運の要素が残ります。

だからこそ、人を入れ替えるという判断そのものにリスクがあります。 次に来る人が同じように進められるかは、しばらく一緒に働いてみるまで分かりません。いま噛み合っている状態は、それだけで価値を持ちます。

依頼する側にとっては「安い選択」でもある

ここが本題です。単価を上げるほうが、実は安く済む場合があります。

依頼する側の本音としては、うまくいっている状態を、なるべく安く、なるべく長く続けたいはずです。それは自然なことだと思います。

しかし単価の相談を受けたとき、天秤にかかるのは次の2つです。

  1. 増額を受け入れて、いまの状態を続ける
  2. 断って、また探し直す

2を選んだ場合に発生するものを並べてみます。

  • 代わりの人を探す時間と、商談にかかる手間
  • 契約や受け入れの事務手続き
  • 新しい人が立ち上がるまでの数週間から数か月
  • その間、周りのメンバーが説明や教育に取られる時間
  • 決まるまで進まない作業と、引き直しになるスケジュール

そして、いちばん大きいのが引き継げないものです。なぜその設計にしたのか、どこに落とし穴があるのか、過去に何を試して駄目だったのか。こうした経緯は、ドキュメントには残りません。人と一緒に抜けていきます。

さらに厄介なのが、前の項で書いた点です。探し直したところで、次に噛み合う人が見つかる保証はありません。 時間とお金をかけたうえで、また同じ見極めをやり直すことになります。しかも、うまくいかなかったと分かるのは、多くの場合また数か月後です。

つまり、交代は「コストがかかる」だけでなく「うまくいくとは限らない」。 ここが厳しいところだと思います。

これらの合計と、月々の増額分を並べたとき、増額のほうが小さいことは珍しくありません。 少し上げて継続してもらうほうが、探し直すより安く、速く、確実です。

つまり単価の増額は、依頼する側にとって出費というより、止まらないために払うコストだと考えています。据え置いたまま抜けられるほうが、はるかに高くつきます。

据え置きは、問題を先送りしているだけ

もうひとつあります。市場の相場は動きます。据え置き続ければ、実際の価値と支払額の差は開いていきます。

差が開けば、いつかその人は離れます。そのとき依頼する側が払うのは、先ほどの交代コストです。早めに調整しておくほうが、結果的に負担は小さくなります。

逆に言えば、単価が上がらないというのは、その場で価値を出せていないというサインかもしれません。それは本人にとっても、依頼する側にとっても望ましい状態ではないはずです。

であれば、その現場を離れて別の現場へ移ったほうが、お互いにとって良いのかもしれません。価値に見合わない金額で働き続けるのも、期待した働きが得られないまま契約を続けるのも、どちらも損をしている状態だからです。

エージェントの取り分も減っていない

エージェントについても同じです。

取り分を削って私の分を増やす形ではなく、発注する側が払う金額そのものが上がりました。 この形なら、エージェントの取り分は減りません。契約が続くので、収益も途切れません。

三者が何を得たのか

私の場合、単価が上がったことで、それぞれが得たものは次のように整理できます。

立場 得たもの
依頼する側 噛み合っている状態を維持できる(引き直して当たりを探さずに済む)/経緯やドメイン知識を持つ人が継続する/代わりを探す時間と手間が発生しない/開発スケジュールを引き直さずに済む
エージェント 契約が継続する/支払総額が上がるため、取り分が減らない/稼働している人が離れにくくなる
自分 収入が増える/自分の価値が金額という形で確認できる/続けて関わる理由ができる

誰かの取り分を奪って成立したわけではありません。 私はこの交渉を、そう捉えています。

ただし、上げにくい構造の案件もある

ただし、どの案件でも同じように動くわけではありません。

自分と発注元のあいだに何社も入る商流では、単価の見直しが渋られることがあると聞きます。間に入る会社の取り分に影響するためです。構造上、価値を出していても金額に反映されにくい場合はあります。

これは自分の努力ではどうにもならない部分です。交渉がうまくいかなかったときに、自分の価値がないと結論づける必要はありません。 案件の構造を疑ってみるほうが、次につながると思います。

準備できたのは、記録が残っていたから

ここまで書いてきた資料は、交渉の直前に思い出して書けるものではありません。

1年前に何をしたか、それがどんな影響を持ったか。まとめて振り返ろうとすると、良かった仕事ほど忘れています。私が資料を書けたのは、日々の記録が残っていたからです。

エンジニアなら、コミットメッセージがそのまま材料になる

特別なことをする必要はないと思っています。開発者であれば、gitのコミットメッセージと説明を丁寧に書いておくだけで、記録資産になります。

毎日やっている作業に、少し手間を足すだけです。何をなぜ変えたのかを書いておけば、後から読み返したときに開発の詳細が分かります。専用のメモを別に用意するより続きます。

私は交渉の資料を作るとき、この記録をたどりました。8項目を並べられたのも、期間まで書けたのも、記録があったからです。

資料が効いたのは、論理だけが理由ではないと思う

もうひとつ、書いておきたいことがあります。

実績を時系列でていねいに並べていくと、読む側は「ああ、あの頃こんなこともあったな」と思い出します。項目が8つ並べば、単純に「これだけやったのか」という印象にもなります。細部まで書けること自体が、その仕事に深く関わってきた証拠にもなります。

判断するのは、結局のところ人です。相手の判断軸に合わせて書きながら、同時に気持ちも動かす。振り返ると、その2つが噛み合ったのだと思います。

まとめ

月収68万円から70万円になったときにやったことは、次のとおりです。

  • 実績を8項目に整理し、それぞれ「価値・再現性・期間」で書いた
  • 作業内容ではなく、それが何を変えたかを書いた
  • 「同じ型で展開できる」という再現性を明記した
  • 主張を、発注する側の判断軸(リードタイム・品質・不確実性・リスク)に翻訳した
  • 希望額に届かない場合の意向も、先に書いておいた
  • 技術を評価する人と、金額を決める人は別だと想定して書いた

小手先の言い回しでどうにかなった、という実感はありません。丁寧に仕事をして、丁寧に記録を残して、準備をする。 私がやったのはそれだけです。

ただし、これは私の1回の経験です。案件も、相手も、タイミングも人それぞれなので、同じようにすれば必ず上がるとは言えません。

案件が決まるまでの経緯や契約条件は、レバテックフリーランスを実際に使った評判にまとめています。

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